千束石憧(黒松)

     

豊後大野市指定有形文化財

 かつては黒松から栗ケ畑へ通じる、主要な道路の一つであった千 束上村の山道の脇に建立されている。  町内にある石憧の中では最も大きく、総高は2メートル56センチ ある。特に大きな欠損箇所もなく、全体にバランスの良い優美な石睡 である。  紀年銘や造立目的等は彫られていないが願主と思われる「道清・妙 慶」という、仏門にある人の名前が竿の部分に刻まれている。 造立時期は、室町時代と推定される。  笠・龕部・中台・竿・基礎全てが円形であるのは大変珍しく、当 町では、この1基だけである。町内には、指定、無指定を含めて石 憧は10基余あるが、龕部及び竿は四角形という例が多い。  宝珠には火焔があり、請花の部分には蓮弁が線彫りされている。  笠は内ぐりが深く、軒先には垂木が刻まれており、わずかに朱も 残っている。  龕部の八尊像の彫りは深く、特に大きな欠損部分はない。六地蔵 の他は、閻魔様とお釈迦様が彫られている。  中台は蓮弁もなく簡素である。  竿は、丁寧に造られた円形の基礎部分にしっかりとはめ込まれ安 定している。  地域の人々は、近年まで、歯の痛む時にお参りして歯痛の止むの を祈ったということである。